KIDILL(キディル)が2023年秋冬コレクションをパリで発表しました。
テーマは "ENFANT TERRIBLE"
「濁りがなく純粋で、個人から溢れ出す気持ちは、枯渇した器にそそがれる“水”
のようだ。その流るる存在は、なんらかの救済を意味する時がある」
デザイナー末安弘明は、創作に向かう自身の根源的なマインドを反芻するように語り、2023年秋冬コレクションを介して、永遠だと断言できる自身の「コア」と強く手を結び直しました。
デザイナーは、ティーンエイジャーの危なげな雰囲気を活写したいくつかの傑作ドキュメンタリーや、スパイク・ジョーンズ、ハーモニー・コリン、ダニー・ボイルら、青少年の損失感と日常の危険な結びつきを露わにし、スケートやパンクをはじめとしたユースカルチャーに深く関わる監督が残した無数のフィルムに精神的な次元での共感し、不揃いなそれぞれの人生におけるあらゆる美醜、心の戸惑いと救い、影や光を見出しました。中でも、オールドスケートと重なる事象はもっともコレクションと近接していきます。
「DC SHOES」と、DCスケーターとのコラボレーションを通じて、末安の現在形のエモーションはコレクションにまざまざと立ち現れています。ミリタリー素材などにオールドスケートのDIYの雰囲気を彷彿とさせるマルチプリントを随所に施したり、ツィードとチュールが思いがけない出合いを果たし、ビジューやリボンといった装飾とテキスタイルのコンビネーションに意外性を追求していく。
これまで以上にDo-It-Yourselfの精神を前景化させたことは、スケーターたちの自由を重んじるマインドへの敬愛の顕現であり、末安の「コア」を今一度呼び起こすもっとも奔放なアプローチでした。
継続する多くのコラボレーターとの対話によって切り拓かられる豊潤なイメージに加え、ウォン・カーウァイの映画に漂うノイジーな雰囲気 - 煙った空気や寂れた草花、退廃的で雑多なムード、性差を浮遊させる鋭い眼差しは、劣化した壁紙のような質感をイメージしたデニムとガールプリントの組み合わせや、KIDILLらしいボーイズルックとしてコレクションのエッセンスに反映されています。
たとえば、日々を生き抜き、枯渇感や不満足、心の隙間を埋めるようにスケートに没頭する一人ひとりの姿。それだけで、自身のもう一つの現実と欲求を見出し、仲間との繋がりを育み、救われる。決定的な純粋性が行動の原点となっている彼らの姿は、末安自身が人生を通じて渇望し続ける「本質的な自由」のあり様と同期していくようだったと語ります。
「自分はファッションに救われた」という彼は、自身の気持ちだけに従い、ロンドンで服作りをはじめた決定的な初期衝動をふたたび想起したのです。
「あの頃と同じく、今も、思いのままに手を動かし始め、古着のカスタムをする屈折のない時間を過ごして、救われている。現実と想像の中にあるフラストレーションをその時間に突っ込むことができ、『好き』を形にすることができる。この事実は、これまでもこれからも変わることがない」。「好き」に縛られることもあるが、「好き」は自由をもたらす。自身にとって確かなものとは、自分自身の「コア」と永遠に結びつき、純粋で、信じられるものだと末安はいう。「これこそが自分の様式美である。なんらかの名称がつけられようと、そこに枯渇を感じながら、“水”をそそぎ、決して立ち止まらず、アップデートをしていけば、それこそが新たなカウンターを生み出すかもしれない」。
アンファン・テリブルは、現在の、KIDILLの声明である。
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